ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実上下巻 原題『Wewishtoinformyouthattomorrowwewillbekilledwithourfamily』/フィリップ・ゴーレイヴィッチ WAVE出版
生かされて。/イマキュレー・イリバギザ PHP研究所
ShakeHandsWithTheDevilRomeoDallaireCarroll&GrafPub

みんなの「声」が同じ顔して、肩を組んだ感情に世の中が覆われた時、居心地の悪さを感じます。
かと言ってその雰囲気にすぐ反応すると、単なる<反「声」>になるだけで、これもダメです。

他国や他民族のことになると、急にプリクラのようなシール写真が量産されて、誰のシール手帳を見ても雑誌を開いても、テレビやネットも、所構わず「某国」や「某民族」が張り出されます。
私は、行った事もない国だし、そこの民族の言葉も話せませんので、それが当たっているかどうか、想像もつかないのです。

大概は「保留!」と現実逃避して、自己慰安に努めますが、それでもなんらかの態度を示さなくてはいけない時は、一つのやり方を取るようにしています。

自分の手をじっと見る、そして、とんでもなく遠い国の信じられない事件を自分なりに想像する。
その両極からの共鳴で生まれた「波紋」を、みんなの「声」や、プリクラ「他国」だらけの社会にぶつけて、浮かび上がってきた「相貌」を、とりあえず今の自分が向き合う「問題のイメージ」だと思うようにしています。

1994年4月6日から100日間で、100万人が殺されました。

武器はマチェーテ(大鉈・山刀)
ツチ族であるというだけで、フツ族の人が
隣人が隣人を庭で、同僚が同僚を職場で、医者が患者を病院で、教師が生徒を学校
で、神父が信者を教会で、家族が家族を居間で・・・

なぜ?

国連ルワンダ支援団の目の前で殺戮が行われ続けましたが、国連軍は死肉を食べる犬を撃つだけで、ジェノサイド(民族殺戮)を止めることをしませんでした。
いや、ダレール司令官は、必死に国連とアメリカ、フランスを始め西側諸国に訴えたのですが、彼らは黙殺したのです。
それだけではなく、自分たちの利権を守るために、殺戮を止めることを妨害し、フツ族至上主義者を守ったのです。

四国の1・5倍ほどの面積で、80パーセント近い敬虔なキリスト教徒が、同じ信者である人口の1割を殺し尽しました。
首都にいた25万人のツチ族のうち20万人が、初めの一ヶ月で殺されました。
殺しつくし、殺し疲れ、対象のツチ族が見つからなくなって、終息した3ヶ月。
神父が、ツチ族であった自分の母親を「ほら、ゴキブリを連れてきた。」と言ってフツ族に差し出し、教区のツチ族リストを渡します。

私は、自分の想像力がついてゆけず、死者数や信じられない事象に、無感覚になってしまいました。
一つの村人が全員殺され、一日にして村が消え去ってしまっても、数百人の人間が殺されたと書かれているのを読んでも、前のページで殺された都市の数万人と比較し
て、「それだけか」とふと思ってしまうのです。

しかし、私達と違った神話と常識を持った、未開な部族間の抹殺事件で、私達とは関係ない別世界の話しで「ない」ことだけは、「分かります。」

フツ族が悪の加害者で、ツチ族が善の被害者などという単純なことではないのです。過去には、ツチ族がフツ族を虐殺し、同じようにフツ族がツチ族を虐殺した歴史があります。
事件後、虐殺され続けたツチ族軍が政権をとり、フツ族の人達が大量の難民となりました。
そしてツチ族政権のフツ族への虐殺・・・・・・
しかし、その時間よりもずっと長い間、両族が共存し混在した家族を作っていたのです。

大昔のアフリカ話ではありません。10年ほど前の事件なのです。
同じ時期世界は、ユーゴスラヴィア紛争に情報と資金と兵と、関心を集中していました。
日本では、ほとんど報道されていません。
当時の国連高等難民弁務官は緒方貞子で、フツ族至上主義者が仕切る難民キャンプに人道援助物資を送り続け、横流し資金でフツ族逆襲の地盤を作ったのです。

国際社会が、ポケットに手を突っ込んで彼らの虐殺を見ていたのは、事件のずっと前からそうだったし、事件の後もそうだったし、今もそうなのです。
国際社会や国家が見ているのは、一人の死や何万人の死者達ではなく、国家同士の
「顔」なのです。

私の手には、マチェーテ(大鉈・山刀)が握られています。
ほら、あなたの手にも・・・・
(2006年10月)