(97年7月感想文)
モノリス「突然ですが、歴史とは何だと思いますか?」
のり「なんですか、急に!それに、一体あなたは誰なんですか?しかも唐突に歴史が何かだって?・・・しかしそんな類の問いは私嫌いじゃないから、ちょっと考えてみようかな。そうですね〜一般的なイメージで言えば、過去→現在→未来へと繋がる事実の集積のように思えますが。」
モノリス「では、あなた方がその事実そのものや、事実の集積を知りえていると思っているのは、何を根拠にしているのですか?」
のり「そんなもの決まっているじゃありませんか、過去に存在していたと実証された物質や資料があるからですよ。」
モノリス「他には?」
のり「他って言われたって、ウームそれだけじゃだめなの?」
モノリス「それなら、偶然にも現在まで残っていることが出来た幸運な石ころや人工物、そしてその当時の知識人達による主観に満ちた文献が歴史なのですか?それが過去の事実(!)なんですか?それらは単にその極小な痕跡かそれを記述した現存の史料ではないのでしょうか?」
のり「そんな風に言われたって・・・他に知る術がなし・・・ちょっと待ってよ!そう考えたら、現在まで痕跡すら残っていない過去の事実はどうなるの?」
モノリス「はっきり言って、「無い」ことと同義です。」
のり「そんなにはっきりと迷いもなく言うなよ。なんとなく無力で、絶望的な気持ちになってしまうじゃないか。」
モノリス「分かりました。感情を込めて言いましょう。残念ながら、あなた方が抱いている歴史とは、過去の事実なんかではありません。」
のり「じゃあ、今度は俺の方が聞くけど、歴史って何?」
モノリス「歴史とは、過去の限られた史料を元に、私達が<現在の意味>に解釈しているだけなのです。そこには、常に読み替え可能な{現在の意志}がある限りなのです。」
大海原にかすかに見える岩頭は、その裾野に広がる巨大な暗礁で我らを座礁させることもあるでしょう。
しかしそうであっても、舳先の先が前方であるという無根拠と、後方に残る水脈が一瞬の輝きと共に無限の波間に消え去ることだけは、信じられるかもしれません。
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