「男」「女」って、なんだろう?
「性」って、何なんだ?!
ここ数ヶ月、この半陰陽に関する書物を読んでいて、本当にわからなくなりました。
「性の自己決定」は、近年にわかに注目を集めてきています。
同性愛や性同一性障害や、身体の性、脳の性、性の指向性などが社会的な問題として取り上げられて、「性の多様性」が認識されるとともに、「性の自己決定」が「自己」の重要な要素として考えられてきたからです。
そしてその自己決定時の帰属先は、あくまでも「男性」「女性」です。
もちろん身体的な「男性・女性」、指向としての「男性・女性」、自己認識の「男性・女性」は、単一ではなく多様な組み合わせが可能だし、それぞれも微細な細分化が認識されて、自己決定の選択肢は広がってきていました。
しかしここにきて、第三の性ともいえる「半陰陽」が、性の要素に加わってきたのです。
先の「男性・女性」は、いくら細分化していったとしても、「男性性」と「女性性」の2極構造であることに違いないのです。
「男性性」の領域が広がって、その中に自分の近似値的な性を認め、自己決定したとしても、「男性性」という強権的な分類構図内での自己決定であるのです。
「半陰陽」は、この「男性」「女性」化する際の突然変異で、なんらかの障害を被った特異な症例(!)であるという考えがありました。
1950年代にジョン・マネーによって作成されたインターセックス・チルドレン(半陰陽児)に対する治療プログラムを元に、
「新生児のクリトリスが0.9cm以上であれば治療の対象とし、母性本能を優先させて女児として養育する。また男児の新生児のペニスが2・5cm以下であれば、その新生児は、将来6・4cm以上に発達しないと予想されるので、女児として養育する。」
という基準が設けられ、医療行為として定着してゆきました。
また養育における性の決定基準の一つとしては、新生児の生殖機能がどちらの性で機能しているかを検討して、精巣に妊孕能力があれば男性にし、子宮が正常であれば女性にするというのもあります。
この中での治療とは、切除、開腹摘出、ホルモン注射等を意味します。
これらの判断は、上記のインターセックス(半陰陽)は、「病的発達」であるという考えに基づいています。
では、「男性」「女性」とはなんなのでしょうか?
現在の指標は、「性染色体構成」「性腺の発生」「内性器の発生」「外性器の発生」「尿道口の発生」の一次性徴期と、「性的自認」「性的指向」「二次性徴期の発現」であると考えられています。
これはあくまでも身体機能としての「男性」「女性」であり、間接的に言えば生殖可否やジェンダー的「男性」「女性」の意味も付加されているのが現実です。
我々の「性」は、これらの項目中の「+」「−」「機能能力の高低」「形態」など無数の要素による、天文学的組み合わせが考えられる中での、類例無いたった1つの「性」なのです。
いわゆるインターセックス(半陰陽)も、この1つの「性」です。
人間は、胎内で様々な段階と色々なシステムや分泌量の多少や時期によって、始原生殖細胞が未分化性腺と未分化外部生殖器に進んでゆきます。
これは、中性性から多様化した「性」形成への決して断裂しているものではない、陸続きの移行行程なのです。
故に、女性性と男性性は、一つの性の領域の虚像名称でしかありません。
ペニスの長さが2・6cmが正常で、2・5cmが病的であることなどないのです。
「生」が「性」と密接な関係にあるということは、「生」の唯一性が同時に「性」の唯一性に裏づけられていなければならないのです。
さぁ、一回りしてしまいました。
「性」って、何なんだ?!
「女」「男」って、なんだろう?
ミルトン・ダイアモンド氏による「インターセックスの子どものマネージメント」と「性のグラデーション」(橋本秀雄)を参考に基本対応をまとめてみます。
医療者は、子どもが外性器形態からは性の判定が出来ないことをきちんと告知、説明する。
戸籍の性別記載の義務はなく、留保できるので、内性器と外性器の構成を検討して診断する。
命名は、できるなら男女どちらでも通用するような名前を家族に提案する。
性染色体と性腺の構成検査、内性器検査の際には、決して試験開腹手術は行わなず、CTスキャンなどで検査する。
性腺が癌化するという理由で摘出手術は行わず、定期的な性腺検査をおこない、カルテは長期的に保存する。
排尿障害・性交障害・分娩障害・心理的な障害が起こる内性器、外性器、尿道口の美容形成手術は行わない。
身体の性及びジェンダー、半陰陽に関する科学的な情報を開示し、性の一形態であり病的発達でないことを説明し、長期的な適切なカウンセリングを実施する。
泌尿器科、婦人科、小児科、内分泌科、形成外科、精神科の医療チームを作り、家族に精神面の支援と情報提供(自助グループ、支援団体情報も含む)を長期的に行う。
当事者が思春期に近づいたら、性的指向や性自認について話し合い、カウンセリング等での精神面のフォローをおこなう。
半陰陽児とその家族が社会的に孤立しないために、医療、福祉、看護、保健、学校教育関係者等でチームを作り、理解と支援を強化する。
また『トランスジェンダリズム性別の彼岸』に用語が分かり易くまとめてありましたので、引用・抜粋・編集します。
●トランスヴェスタイト(Transvestite・TV)
異性装者。反対の性の服装や性役割をパートタイムで見に着ける人たち。なお、トランスヴェスタイトは精神医学側が作った言葉なので、これを嫌うTVの人たちは、近年、クロスドレッサー(Cross−Dresser)と自らを名づけている。
●トランスセクシュアル(Transsexual・TS)
身体の性(sex)と個々が自己認知する性(gender)が一致しないケース。「自分が何者であるのか」(identity)を表現するために肉体を自己認知する性へ近づけたいと思っている人たち。そのためにホルモン摂取が必要な人がいるが、不必要な人もいる。ただしその双方とも、性転換手術までは考えていない。
●非トランスセクシュアル(NonーTranssexual)
身体の性と自己認知の性が一致しているケース。
●FTM(FemaletoMale)
自分の性を女から男へ移行する人。TSの場合であればFTMTSと呼び、TGであればFTMTG、TVの場合も同様。
●MTF(MaletoFemale)
自分の性を男から女へ移行する人。
●SRS(SexReassingnmentSurgery)
性別再判定手術。性転換手術。英語圏ではSexChangeOperationという表現は公では用いられていない。
●トランジション(Transition)
生得的な生物学上の性から反対の性に移行すること。
●パッシング(passing)
トランジション後の性が、外見や振る舞いも含めて、他者が見て疑問を感じないほど社会に通用していること。
●セクシュアル・オリエンテーション(SexualOrientation)
性的指向/志向。自分の性的好みがいずれに向いているかを示すこと。
●クィア(Queer)(徳さんの読書感想文・99年1月『同性愛と生存の美学』M.フーコー他参照)
直訳は「変態」「おかま」。ゲイやレズビアンたちが人種・民族・性的嗜好などの位相の違いで多様化してきたので、総体としての言語が必要となった。社会の中でノーマルとされたきた路線から自分は逸脱していると自覚的である。
●ドラッグ(Drag)
性の越境を誇張しながら確信的に演出すること。ドラッグ・クィーンはフェミニン性を過剰に強調して演ずる者。ドラッグ・キングはマスキュリン性を強調し演ずる者。
●セックス(sex)
持って生まれた生物学上の性、あるいは解剖学上の性。行為としての性の意味もある。
●ジェンダー(gender)
社会的文化的に作られた性別。
「性」って、何なんだ?!
「女」「男」って、なんだろう?
(2003年8月)
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