盆栽?
いよいよ徳さんも盆栽世界に入るほど、年をとったのだね、などと思ってはいけません。
ようやく、盆栽の奥の深さに気付かさせて頂いたのです。
誰に?
もちろん、盆栽宇宙にです。
本書は、くどくどと専門的な解説も無く、300点以上の盆栽その一点一点を丁寧な写真で紹介してくれています。
その編集には、盆栽は説明ではないんだ、この存在、立ち姿、調和、鉢との関係、そしてその世界を作り上げる為に細部にこだわり、精魂傾けた持ち主の想いを感じ取って欲しいとの気持ちが伝わります。
でも、観れば観るほど持ち主の陰は背景に遠のき、自然と人工が出会った「奇跡の美」が大きく浮き上がってくるのです。
盆栽の王道である「松柏盆栽」は、十数cmの巨樹です。
もみじや楓など四季変遷を愛でることが出来る雑本盆栽を「葉もの盆栽」と言います。
外界自然の移ろいのなかに、極小な移ろいを体現し、春の芽吹きから紅葉や寒樹まで堪能できるとは・・・
花姿美しい「花もの盆栽」は、日頃花の艶やかさばかりに目がいっていた私にとって、花樹の革命でした。
花が咲けば実がなるのが道理、道理があれば美も咲きます。
「実もの盆栽」は、「樹に宝石がなる」とは編者の言。
石や小鉢に苔むしていたり、共に身を濡らす山野草の「草もの盆栽」。
しっかり抱き合った姿は、クローデルか小路草の趣です。
床飾りや棚飾りの「席飾り」は、3・5・7の奇数飾りが原則だとか・・・奇数は世界数。
盆栽は、「盆」と「栽」の饗宴。
名鉢は、それこそ世界の大舞台なんです。
高校時代に突然我が家の庭に出現した、手作りの盆栽棚。
盆栽は、父の後ろ姿でした。
(97年5月感想文)
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