わたしは漫画も好きで、毎月かなりの本を読み飛ばしています。
子どもと取り合うようにして読む本もあるし、周りが寝静まった後に涙腺を緩ませながら一人読む本もありますが、総体としてこの頃の漫画はただ多様化しているだけではなく、優れた作品も多いと思います。
聾唖の彼女と彼女の子どもを中心に、結婚の問題そして出産、家族として個人として回りの人達とともに生きてゆくとは?と、具体的な事柄にきちんと向き合って描かれています。
『遥かなる甲子園』『どんぐりの家』などの作品で知られる山本おさむさんの本は、わたしは好きでよく読んでいるのですが、山本さんの本が総論だとすると、彼女の作品は各論にあたるかもしれません。
障害者の問題には総論ばかりが目の前に展開させられて、自分なりに考えようと思う前に重たい気持ちに支配されることが多いです。
しかし、よく考えてみると障害者の問題は、何々の障害を持っているだれだれのことではなく。
「三原徳久」などと言う具体的に名前をもった、目の前の人間との関係であり、自分が生きてゆく問題なのです。
この本は、深く考えさせられることや初めて気付かされる事が日常の中で描かれていて、長期の宿題を出された感じですが、重くならずに彼女の笑顔とともに語られる言葉には救われます。
日頃使っている普通の言葉で障害の問題を語れることが、可能であることを示してくれた優れた書物です。
(2004年9月)
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