おわりの雪/ユベール・マンガレリ 白水社
ウェイクフィールド/N・ホーソ−ン 新潮社
ウェイクフィールドの妻/E・ベルティ 新潮社

方向も目的意識も無いままに、病のように読み続ける私ですが、無性に「小説」を読みたくなる時があります。
何故かは分かりません。
手元にある本や、図書館で聞いた事も無い作家の本に手を伸ばしたりしながら、その衝動に対処するのですが、自然と沸き起こってくるこの癖は、私自身が結構好きで、大切にもしています。

ある日、目にした籠の中のトビをどうしても手に入れたくなった少年は、養老院で散歩の連れ合いをして小遣いを貰い、半分を家に生活費として入れ、残りをトビを買うために貯め始めます。
病気の父との会話、疲れ果てた母の涙、トビ欲しさのために引き受けた臨時の仕事が引き起こす心の葛藤、そして行けども行けども尽きない雪原・・・・・

ちょっと旅に出てくるけど、すぐ帰るよと告げ家を出たウェイクフィールドは、そのまま近くに家を借り、20年後に何事もなかったかのように家に帰ってきました。
そして、その不可解な現実に妻は・・・・
『緋文字』を書いたホーソーンの短編に、150年の時間を超え妻の視点が加わった、驚くべく結晶です。

読み終えていつも気付くのです。
私は、この清冽な世界に出会いたかったのだと・・・・

全怪獣怪人大事典上中下巻/竹内博・監修 英知出版

おお、そうだった、あった、あった。真剣に観ていたな〜。
光速エスパーやろ、マグマ大使だろ、ブースカにコメットさん、シルバー仮面にレインボーマン・・・・・
えっ、この子役水谷豊だったの!
ひゃぁ〜、「まぼろし探偵」に吉永小百合が〜

懐かしい!ただ、懐かしい、そんな私の個人的な感慨書物です。

家内安全/夏石鈴子 マガジンハウス
新解さんの読み方/鈴木マキコ(夏石鈴子) リトル・モア
バイブを買いに/夏石鈴子 リトル・モア
きっと大丈夫/夏石鈴子、平間至・写真 マガジンハウス
愛情日記/夏石鈴子 マガジンハウス
いらっしゃいませ/夏石鈴子 朝日出版社

正直に言って、この頃の日本文学界の作品は、私はよく分かりません。
分からないから面白くないのか、面白くないから分からないのか知りませんが、背伸びして(はたまた話題に遅れまいと)新作本を手に取るのですが、だんだん億劫になってきてしまいました。
へ〜とかホ〜とかは、漏れ出てきますが、何気ない一文にぞわりとすることが無くなりました。
これからは、感性の鈍化に開き直り、気が向いた時にだけお付き合いさせていただくことにしようと思います。

えっ、回りくどい?

分かりました。はっきり言いましょう。
他に好きな人が出来たんです。
少し前から心は離れていたのだけど、言い出せずにいました。
たまに会うとそれなりに感心することもあり、腐れ縁のようだったから、自然消滅してくれたら良いなと虫のいいことを考えていました。
でも、彼女に出会って、あなたたちへの残り火がすっかりと消え失せてしまいました。
自分でも驚くほど、あっけなく・・・・

小説はワンパターンになっているし、文章も決して上手いわけでもなく、不器用で失敗することも多いけど、言葉に対する身の寄せ方や裏切られ方は、不思議と懐かしい感覚を呼び覚ますのです。
中学時代や高校時代に、本を読む喜びと世界との違和感を感じていた自分を・・・

お元気で。さようなら。

(2005年3月)