方向も目的意識も無いままに、病のように読み続ける私ですが、無性に「小説」を読みたくなる時があります。
何故かは分かりません。
手元にある本や、図書館で聞いた事も無い作家の本に手を伸ばしたりしながら、その衝動に対処するのですが、自然と沸き起こってくるこの癖は、私自身が結構好きで、大切にもしています。
ある日、目にした籠の中のトビをどうしても手に入れたくなった少年は、養老院で散歩の連れ合いをして小遣いを貰い、半分を家に生活費として入れ、残りをトビを買うために貯め始めます。
病気の父との会話、疲れ果てた母の涙、トビ欲しさのために引き受けた臨時の仕事が引き起こす心の葛藤、そして行けども行けども尽きない雪原・・・・・
ちょっと旅に出てくるけど、すぐ帰るよと告げ家を出たウェイクフィールドは、そのまま近くに家を借り、20年後に何事もなかったかのように家に帰ってきました。
そして、その不可解な現実に妻は・・・・
『緋文字』を書いたホーソーンの短編に、150年の時間を超え妻の視点が加わった、驚くべく結晶です。
読み終えていつも気付くのです。
私は、この清冽な世界に出会いたかったのだと・・・・
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