下の子から、「この本、面白かったよ。お父さんも読んでみて。」と、1巻を渡されたのでした。
上の子は、私に似て乱読派で、しょっちゅう推薦本が回ってきます。
出来るだけ読もうと思うのですが、自分の読みたい本もあり、追われっぱなしです。
下の子は、本を読むのがそんなに好きでなく、私が読んで面白かった本や絵本を回したり、子どもが持っている人気コミックを、私が借りて読んだりしていたのですが、長い読み物を薦められたのは初めてのことです。
「おっ、本を薦めるなんて、珍しいこともあるもんだ。面白かったと?」
「うん!途中で止められなくて、一気に読んでしまったの、初めてかもしれない。」
「そりゃ、すごかね。」
「それに・・・・・」
「何?」
「登場人物の一人が、お父さんにどこか似ているところがある気が・・・・それに、どうしてか分からないけど、お父さんに読んでもらいたい!と思ったんだ。・・・・でも、一番の理由は、一緒に2巻・3巻・・・と読んでゆきたいなと思って!」
「ほう!そりゃ、光栄の至りばい。」
「明日、2巻は私が学校で借りて先に読むから、1巻は、お父さんが閑な時に読んでね。」
「おう!了解。」
こうやって始まった「親子バッテリー」の感想キャッチボールは、私にとって今年一番の収穫でした。
まだ手の届く所にいると思っていた子どもの位置には、幻影すら残っていなくて、
「親の希望」という護符が張ってあるだけでした。
子どもは、遙か遠くの荒野に、自分の手の感触を頼りに、穴を穿ち、感性の種を蒔き続けていたのです。
お互いが本を読み進め、ぽろりぽろりと交わす言葉の一つ一つが、私には本当に衝撃でした。
そんな感じ方があるのか!
ほう、そこまで読み取れたんだ!
えっ、そうだったか?気が付かんやったぞ!・・・・
私は、知らず知らずのうちに全力で応答し、作品を読み直し、ともに感動していました。
そんな交感を可能にさせた『バッテリー』、一級品の文学です。
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