バッテリー全6巻/あさのあつこ・著佐藤真紀子・絵 教育画劇

下の子から、「この本、面白かったよ。お父さんも読んでみて。」と、1巻を渡されたのでした。

上の子は、私に似て乱読派で、しょっちゅう推薦本が回ってきます。
出来るだけ読もうと思うのですが、自分の読みたい本もあり、追われっぱなしです。
下の子は、本を読むのがそんなに好きでなく、私が読んで面白かった本や絵本を回したり、子どもが持っている人気コミックを、私が借りて読んだりしていたのですが、長い読み物を薦められたのは初めてのことです。

「おっ、本を薦めるなんて、珍しいこともあるもんだ。面白かったと?」

「うん!途中で止められなくて、一気に読んでしまったの、初めてかもしれない。」
「そりゃ、すごかね。」

「それに・・・・・」

「何?」

「登場人物の一人が、お父さんにどこか似ているところがある気が・・・・それに、どうしてか分からないけど、お父さんに読んでもらいたい!と思ったんだ。・・・・でも、一番の理由は、一緒に2巻・3巻・・・と読んでゆきたいなと思って!」

「ほう!そりゃ、光栄の至りばい。」

「明日、2巻は私が学校で借りて先に読むから、1巻は、お父さんが閑な時に読んでね。」

「おう!了解。」

こうやって始まった「親子バッテリー」の感想キャッチボールは、私にとって今年一番の収穫でした。

まだ手の届く所にいると思っていた子どもの位置には、幻影すら残っていなくて、
「親の希望」という護符が張ってあるだけでした。
子どもは、遙か遠くの荒野に、自分の手の感触を頼りに、穴を穿ち、感性の種を蒔き続けていたのです。

お互いが本を読み進め、ぽろりぽろりと交わす言葉の一つ一つが、私には本当に衝撃でした。

そんな感じ方があるのか!
ほう、そこまで読み取れたんだ!
えっ、そうだったか?気が付かんやったぞ!・・・・

私は、知らず知らずのうちに全力で応答し、作品を読み直し、ともに感動していました。

そんな交感を可能にさせた『バッテリー』、一級品の文学です。

メイク・ア・ウィッシュの大野さん/大野寿子 メディア・ファクトリー

以前、「メイク・ア・ウィッシュ」という「難病の子どもの夢を一つかなえてあげる」ボランティア団体のテレビ番組を、観た記憶がありました。
その時は、確かアメリカの紹介で、ディズニーランドに家族で行きたいという夢でした。
多くの人が、「その子の夢」に参加し、沢山の笑顔で彼らを包み、素敵な一日を実現させていました。
私は、日本にもこんな団体が出来て欲しいと、テレビの前で願ったのを憶えています。

ついに日本にも出来たのだと思いながら手に取った本書、初めの数ページを読んだ後、こりゃいかんと、すぐに椅子を立ち、一人きりになれる部屋に移動して、家族の呼び声にも応えず、何度も目をぬぐったのであります。

残された時間の中、たった一つ「夢」をかなえてくれると言われたら、あなたはどんな「夢」を・・・・

昨今の現実に、気持ちが沈みがちでしたが、子どもたちの「夢」に、「夢を抱く心」を思い出させてもらい、感謝でいっぱいです。

「ありがとう」

皆さんにとって、あたたかい年になりますように!
(2006年12月)