「東京古書店グラフィティ」(1997年2月感想文より)/池谷伊佐夫 東京書籍

この本は、古書店の鳥瞰図集です。
私は、このような鳥瞰イラスト本は結構好きで、妹尾河童の本などは、気が付けば必ず読んでいるのです。
でも、その動機というのは、その部屋の構造とか配置が知りたいというのではなく
て、いつかおとずれるであろう死の床での「幽体離脱」を、似非体験してみたいからなのです。
身体から解放されて見るであろう風景を、想像しては楽しんでいるのであります。

一発勝負の「本番」は、どのように訪れるのだろう?
その場所は、病院なのか?自宅なのか?ひょっとしたら道端の隅で・・・
誰か側に居てくれるのかな?それとも誰も気づかないまま、一人で・・・・それは、それで・・・・と。
鳥瞰本を眺めながら、自分勝手に「本番」を想像しては、どんどんと細部の具体例に流れていって、リアルな感情に翻弄されて、顔をしかめたり、にやりと笑ったりしているのです。

すっと視線が上昇し、下方を眺めた時、本棚の上とか、冷蔵庫の上で、きっと「何か」を見つけたりすると思うのです。
臨終が訪れようとしている時に、冷蔵庫に貼り付ける丸い磁石なんて、どうでもいいと思うのですが、その時は「世界の真理」を見つけたぐらいに感じて「ユリイカ!
(分かった!)」と叫んで、息を吹き返すような気もしています。
(そんなはずないか。せいぜい「冷蔵庫の上に磁石が・・・」と、間の抜けたうめき声なんだろうな。)

買い物の重要な要素は、「目的の物」があるということはもちろんですが、意外と「あの店」という要素が、大きかったりするものです。
あの店のレイアウトや雰囲気が好きだから、あの店に流れているBGMのセンスがいいから・・・・
そして、あの店で店番している「あの子」が好きだから・・・・
これは、買い物そっちのけで、最大決定要素です。
(2008年3月)